子供俳句no.5/選・山田 弘子 2006/06/29掲載

講評
 天気図をみていると、沖縄地方は連日雨マークでしたので、きっと大変だろうなと思っていました。でももうこちらが降り出したころは真夏日になっていることでしょう。
今月も子ども俳句欄に沢山の投句がありました。もっともっとたくさん採用したかったのですが、紙面のつごうで落とした句もありました。自由に思ったことを作品にしていて、とても楽しい句が多かったように思います。きっと自分の身辺をしっかりと見るようになったしょうこだろうと思います。
 できればいままで習った漢字、知っている漢字は使ってみてください。上級生の句で、ここは漢字の方がいいのにな、という句が沢山ありました。もう一度自分の句を見て、ここは漢字のほうがいいと感じたらすぐ直してください。
 しっかりと自然を観察しているようすが作品を通じて伝わってきて、とてもうれしく思っています。また次の投句を楽しみにしています。

(次回の投句締め切りは七月末です)

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<特 選>
 
城辺小一年   ふくざと まひろ
みつけたよぎざぎざもようとかげくん
 まひろくんはとかげをみつけたのです。じっと目をそらさないように一生懸命にそのとかげをみたのですね。背中が「ぎざぎざもよう」になっているのにびっくりして、なんだかとてもきれいだなときょうみしんしんでじっと見つめているまひろくんのようすがよくつたわってきます。ものをしっかりとみることがとても大切なのです。

 南小二年   たいら りょう
おたまじゃくし足をだそうとふんばってる
 ゼラチン状の卵がかえるとおたまじゃくしが生まれ、それがだんだん大きくなると手や足が出てきてかえるになるのですね。おたまじゃくしの胴体がだんだん膨らんで、いまにも足が出そうなけはいです。りょうくんは目をこらしてそのようすを見つめているのですね。「ふんばってる」と六音になりじあまりですが、この句ではいかにもがんばってふんばるすがたが見えてきて、とてもたのしい句になりました。

 城辺小三年   砂川 華野
たいようがプールの中でざんぶらこ
 待ちかねたプールびらきも済んで、今頃はプールを楽しんでいる華野さんでしょうか。プールに子どもたちがドボーンと飛び込むのですが、華野さんはまるで太陽が飛び込んできたように作品に仕上げています。「ざんぶりこ」という表現もいかにも元気な子どもたちの姿が想像できます。お日様もたじたじ。
 
 鏡原小三年   川上 優耀
夏のよるしずかにはいくをかんがえる
 こんな句に出あうと、とってもうれしいですよ。昼間はとても暑いでしょうが、夜は涼しい風が吹いて、ものを考えるのに最適。「しずかにはいくを」の「を」は無くてもいいでしょう。



 平良中一年   長浜 咲弥香
夕焼にみとれて時間見失う
 宮古島の夕焼け空の美しさに私も呆然と立ち尽くしていたことがあります。「夕焼の燃えつきさうな小学校 弘子」こんな句も作りました。咲弥香さんもやっぱり時間の過ぎるのも忘れて夕焼けに見とれていたのね。「時間見失う」とちょっと大人のような表現が出来ました。

 平良中二年   善平 翔太
なやみごとクラゲの足ほど持っている
 俳句の表現の一つに比喩(ひゆ・ものに例える)という方法があります。中学生になると色々悩みごとが増えてきます。勉強のこと、友達のこと、将来のことなど。そんな悩みを「クラゲの足ほど」とたとえたところが独創的で楽しい。悩みごとを楽しいなんて失礼かもしれませんが、こんなふうに詠まれると悩みもそんなに深刻でもなさそう。

 平良中二年   平良 優太
目を閉じて体にうけた南風
 夏は南から風が吹いてきます。風にも季節があるのです。南風は夏の季題なのです。じっと目を閉じて体全体で南風を感じとっている優太君。きっと海の匂いもしたに違いありません。風を感じながら、遥かな海のかなたの島に思いを馳せたことでしょう。気持ちのいい句ですね。 

ワンポイントアドバイス
 低学年の人たちの作品には「うれしいな」「たのしいな」「おいしいな」といった自分のきもちをあらわすことばをそのまま使った作品がたくさんありました。できるだけ「うれしいな」「かなしいな」「きれいだな」といったきもちはそのまま伝えるのではなく、俳句の内容をとおして読む人につたえたいですね。


<入 選>

 ぐすくべ小一年 なかま たえ
ごろごろとおなかがすいてるかみなりが

 ぐすくべ小一年 はまがわ れいか
ひまわりがひがしのそらにむかうあさ

 ぐすくべ小一年 へんざん まさや
かたつむりあめふりのひはげんきだね

  鏡原小一年 ふじい たいか
かたつむりぼくのあさがおたべないで

 鏡原小一年 かりまた しょうり
くわがたをかっていましたしにました

 鏡原小一年 そなん たくみ
みつばちをつかまえしらべたむしはかせ

  鏡原小二年 上原 たつふみ
カエルはね雨にぬれるのすきなのね

  鏡原小二年 山城 ゆめか
アジサイが元気にあさをむかえるよ

 鏡原小二年 山城 まさき
アサガオの色水つくって雨の色

 鏡原小二年 中西 あやな
あじさいが水にぬれてるいいえがお

 平良第一小二年 まえどまりあさい
スイカわりむちゅうになってわりすぎた

  平良第一小二年 いけま いおり
なつやすみいつもかあさんねぼうする

 平良第一小二年 もとなが あんり
雨ふってうんどう会はしょんぼりだ

 平良第一小二年 しゃしき さえ
うんどう会くつしたくつもどろだらけ

 平良第一小二年 新里 楽
うみにいきくらげがいたら注いしろ

 平良第一小二年 亀川 りんかい
かがやくようちあげ花火大空に

 城辺小三年 いけま たかき
じょろうぐも雨なのにいるまどの外

 城辺小三年 佐わだ まさお
プールにはかなぶんさんがういている

 城辺小三年 しもじ さやか
あめあがりなんてきれいなにじでしょう

 城辺小三年 下地 成美
たのしみのぷーるびらきがちゅうしだよ

 城辺小三年 下地 涼香
ふうりんをまどにさげたらかんからり

 城辺小三年 いけま たかき
せんぷうきぐるっとまわりもとどうり

 鏡原小三年 宮国 大介
六月は雨がピッチャンふっている

 城辺小四年 下地 美瑞希
ひまわりがしぼんできてるどうしたの

 城辺小四年 下地 恵美梨
ひまわりのめいろで写真とりました

 城辺小四年 下地 遼太
六月は雨がふるのはなぜだろう

 鏡原小四年 福里采奈
ははの日にてつだいやるぞ兄さんと

 鏡原小四年 新垣 悠
うみびらきサンゴしょうがひかっている

 城辺小五年 荷川取 弥早
大雨だつゆが始まるしょうこかな

 城辺小五年 友利 あいり
父の日はかたもみをしてあげたいね

 鏡原小五年 平良 鮎武
オオゴマダラ体育の時間ひらひらと

 鏡原小五年 狩俣 賀奈子
こいのぼり幸せすいこむ大きな口

 鏡原小五年 荷川取 加奈子
あじさいだ母さんみたいにやさしい色

 池間中一年 浜川 笑子
炎天下亀の子たちもばてている

 平良中一年 砂川 大樹
入学式新たな世界へとびこむぞ

 平良中一年 下地 祐斗
教室の授業の声と梅雨の音

 平良中一年 善平 絵美
梅雨季節おうちの中が服屋さん

 平良中一年 上地 由記
いやな事うちわであおげばとんでいく

 平良中一年 田口 雄太
台風で電柱たちが動き出す

 平良中一年 友利 勇大
せみはとぶわずかな命を抱きながら

 平良中一年 宮里 愛里
虹を見た笑顔になった友と私

 平良中一年 五寄 綾華
夕焼をながめていたら泣きだした

 伊良部中二年 島袋 なつみ
夏の雨きれいな音色ひびいている

 伊良部中二年 波平 愛美
ハーリーや輝く汗でサバニこぐ

 池間中二年 勝連 美咲
晴れた日にヨットが浮かぶ水平線

 平良中二年 山里 夏希
せみたちのあいさつ耳に聞こえるよ


 平良中二年 豊見山 美咲
月桃の香漂う雨の中

 平良中二年 砂川 実賀子
ガジュマルの枝でブランコ毛虫の子

 平良中二年 小川 貴之
夕焼は海に沈んでもえつきる

 平良中二年 前里 静香
炎天下無力な私を呼び覚ます

 平良中二年 下地 一生
炎天下まるこげ子供ぽつぽつと

 平良中二年 与那覇 修寛
かたつむり目玉のばして雨を待つ

 平良中二年 宮城 航大
月桃の花咲く頃に慰霊の日

 平良中二年 我如古 涼佳
クーラーの届く所が行動はんい

 平良中二年 下地 涼香
桜咲くいつもとちがう通学路

 平良中二年 上里 優斗
デカかった入道雲のチェ・ホンマン

 池間中三年 浜元 功太
きび畑緑の風が吹きにけり

 伊良部中三年 佐和田 尚也
青空とともに輝く夏の海

 伊良部中三年 上地 あずさ
五月雨や私の心を映しだす

 伊良部中三年 久貝 莉穂
静けさを裂いて響くか今朝の梅雨

 伊良部中三年 長浜 謙太
海人祭声をはりあげサバニこぐ

 伊良部中三年 亀川 純希
雨の中海水あびてサバニこぐ

 伊良部中三年 佐和田 敦子
ひまわりや一生懸命手を伸ばす

 平良中三年 下地 麻依
母の日に大そうじするお母さん

 平良中三年 下地 ゆりな
帰り道かたつむり達をよけ歩く

 平良中三年 伊地 志織
梅雨になり庭の草花成長期

 池間中三年 仲原 和希
サシバ舞う空を色どる雲になる

 池間中三年 小禄 裕樹
海水を浴びればしみる日焼け肌

 池間中三年 平良 亜也加
夏休み祖母から学ぶあおさ採り

 翔南高一年 仲里 莉奈
春休み毎日畑にいっていた

 翔南高一年 仲間 芽久美
青い空白い砂浜これが夏

 翔南高一年 糸満 亜里沙
夏休み学校ぽつんと立っている

 翔南高二年 下地 アサノ
怖いけど君と歩いた夏の夜

 翔南高三年 砂川 裕貴
眠たいなクーラーきいてるこの教室

 翔南高三年 東風平 祝
深夜まで祭はやしのヤッカヤッカ

 山田 弘子(やまだ・ひろこ) 俳人。兵庫県出身。高浜虚子らに師事。ホトトギス同人、第二回日本伝統俳句協会賞。95年、俳句月刊誌「円虹」創刊・主宰。NHK教育テレビ「俳壇」の前選者。

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