子供俳句no.4/選・山田 弘子 2006/05/02掲載

 今回(三月末締め切り分)は小学生から高校生まで三百三句の応募がありました。前回より二百三句減りましたが、豊かな感性がきらりと光る句や、素直で素晴らしい句などたくさんありました。皆さんの応募ありがとうございました。その中から特選七句、入選六十九句を紹介します。選と講評は「円虹」主宰の山田弘子氏です。学年は今年三月時点のものです。
(次回の投句締め切りは五月末です)

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講評
 新学期がはじまり、みなさんはりきっていることでしょう。去る三月三十一日には、子ども俳句欄の平成十七年度優秀作品の表彰式と吟行会が植物園で開催されましたね。私も神戸から駆けつけました。春休みでしたが、六十名近くも参加者があり、宮古島はすっかり俳句の島になったなと、とてもうれしく思いました。きらきらともう初夏のような太陽が森の植物たちに注いでいましたね。朝晩暖房がまだはなせない神戸とは随分季節の違いを感じました。
 吟行会では保育園の坊やから中学生までみんなしんけんに俳句と向き合った一日でしたね。自分が見たり感じたりした実感を大切に俳句に詠まれていて、共感を呼ぶ作品にであうことが出来ました。また俳句を作る態度が素晴らしかったです。このように自然と一つになることがとても大切です。 
 今回もすばらしい作品が集まりました。みなさんの生き生きとした表情を思い出しながら選をいたしました。

<特 選>

 南小一年・たいら りょう
 ダンゴ虫やよいとなまえつけてよぶ
 畑や庭石の下などにいるダンゴ虫は、危険を感じると体をダンゴのように丸めます。大事な植物を食い荒らす害虫なのですが、その姿はなかなか可愛いですよね。りょう君はダンゴ虫に上ひんな「やよい」という名前をつけたというのです。ダンゴ虫とむきあうりょう君のひょうじょうや気もちがつたわってきて、おもわずこころがなごみます。こんな小さな虫でも、せい一ぱい生きているんですよね。

 城辺小二年・いけま たかき
 きびたおしおじいもぼくもずぶぬれだ
 きびたおしというのはきび刈りのことですね。高くのびたきびは一月の末ころからきび刈りがはじまります。雨の中をきびたおしのてつだいをしたたかき君です。おじいさんもたかき君もずぶぬれでいっしょうけんめいにはたらきました。おたがいに心のなかでかぜをひかないかな、としんぱいしているのです。かぞくとともにはたらくことのすばらしさをかんじさせる作品です。

 城辺小五年・仲里 葉奈
 ねじりそうピンクのパーマかけている
 ねじりそうというのはもじずりそうともいって、一本の茎にらせん階段状にピンクの小さな花をつけるとても可愛い草花です。クルクルとまわっている花がまるでパーマをかけているようだな、と感じた葉菜さんです。このように自分の発見した言葉で俳句にすることはとてもすばらしい。みなさんもぜひねじりそうを見つけてみてください。

 翔南高二年・久貝 美衣奈
 一度だけ作ってみたい雪だるま
 今年は全国的に大変な積雪量があり、新聞やテレビで各地の豪雪の被害が報じられました。でも沖縄地方には雪はまず降ることはありません。そんなニュースを見るにつけ、一度でいいから、思い切り大きな雪だるまを作ってみたいなあ、とそんな気持ちをそのまま俳句にしました。テレビを見て、さも体験したような句を作るのは余り賛成しません。こんな素直な句が大好きです。 

 伊良部中二年・国仲 純貴
 春風が別れと出会いを告げていく
 中学生の年頃は、心とはうらはらに、なんとなく照れくさかったり素直に表現できなかったりして、周りへの言葉が足りないことが多いものです。どうしてもっと素直になれないのかしら、と自分を見つめるもうひとりの私。それが卒業式の日、「お父さん、お母さん本当にありがとうございました」「先生ありがとうございました」と驚くほど素直な自分を発見したのですね。

 平良中二年・陶国 文乃
 入学式父母が全員カメラマン
 宮古島の冬は甘蔗刈りの季節です。高々と伸びた甘蔗を一家総出で刈り倒す作業はなかなか重労働です。台風にも耐えて育った大切な甘蔗を刈って束ねて出荷するのですね。日ごろやさしくて穏やかなおじいちゃんですが、甘蔗の刈り取りにかかると、顔つきが変わってくるというのですね。こんな家族の表情を捉えて出来た一句に大変感心いたしました。

 福嶺小五年・佐次田 萌恵
 ねじり花ソフトクリームみたいだな
 これは冬のマラソンでしょうか。ひゅうーひゅうーと吹く寒風の中をただゴールを目指して走る貴也くん。よけいなことは考えないで、ひたすら走ることだけに集中して。寒い風だけれど、背中から応援してくれているよう。「走りぬく」という下五によって、最後まで完走できた喜びと誇りがにじんでいます。力強さも表現できています。

ワンポイントアドバイス
 太陽と地球の運行をもとにつくられた太陽暦で決められた俳句の季節の分け方は、たて長の日本列島ではうまく当てはまりません。宮古島ではもう初夏のようでも、北海道では雪が降る、といった現象が起こります。ですから春は二月・三月・四月と決められていても、やはり実感を大切に俳句を作ればいいのです。春でも夏と感じたら夏の句を詠んでもOKですよ。


<入 選>

みつば保育園・いけだ りく
もりのなかむしきんぐたちおきてくる

みつば幼稚園・みやぐにりゅうせい
うれしいなたいきとおなじランドセル

南小一年・たいら りょう
目にとどくさくらのはながかわいくて

城辺小一年・かきはな しんご
スリヌケルアツイカラダヲクーラーが

城辺小一年・かきはな しんご
はるの日にじゃがいもほりをしたんだよ

城辺小一年・ますだ だいすけ
じゃがいもはまあるくないよでこぼこだ

城辺小一年・とくやま そうた
ひなまつりみんなでうたをうたったよ

城辺小二年・砂川 かの
かれないでじゃがいもたちよがんばれよ

城辺小二年・荷川取 星弥
りにんしきみんななみだをながしてる


城辺小二年・さわだ まさむ
春休み虫たちいっぱい見えてくる

城辺小二年・いわさき さやか
春休み海に入ってふるえちゃう

福嶺小三年・与那覇 小由利
春のあさ元気にとりがはしゃいでる

福嶺小三年・与那覇 小由利
春の朝すこしさむくてねむりたい

福嶺小四年・佐次田 陽光
あたたかな日ざしを受けるさんぽ中

福嶺小三年・仲座 望
たんぽぽの白いわたげがとんでいく

城辺小二年・長浜 ゆきの
そつぎょう生おわかれしてもわすれない

城辺小三年・具志堅 夏美
さくら花ひらひらおちる川の石

下地小三年・宮川 瑞希
卒業式泣いてわらってさようなら

下地小三年・友利 倫子
春休み四年の準備完ぺきだ

下地小三年・友利 くるみ
お父さんきびかりしててうで切った

下地小三年・宮国 香鈴
春の日に四年になるぞはりきって

城辺小四年・長浜 翼
食べたいよ自分でとったじゃがいもを

城辺小四年・古謝 伸弥
牛がなくえんどうの花がゆられてる

城辺小四年・謝敷 果南
えんどうの花がささやく曇ぞら

城辺小四年・川上 阿里紗
えんどうの花牛がとなりでないている

城辺小四年・川満 稔真
えんどうのまわりをとんでるちょうちょうたち

城辺小四年・荷川取 弥早
えんどう花きれいといわれうれしそう

下地小四年・源河 侑希
あげはちょうあなたはいったいどこへ行く

下地小四年・恩川 日向子
バッタ君くもにつかまり食べられた

城辺小五年・垣花 理穂
春風が通りぬけてくアスファルト

城辺小五年・垣花 理穂
頬を赤くはずかしがり屋な桜花

城辺小五年・仲里 葉奈
晴れた日に野原に行って花つみだ

城辺小五年・仲里 葉奈
春風がねむけをさそう季節だね

城辺小五年・狩俣 あかね
卒業生アーチくぐってさようなら

福嶺小五年・佐次田 萌恵
若草が足下一面はえている

城辺小五年・仲里 葉奈
スミレをねふもうとしたよあぶないよ

城辺小五年・上地 貴大
植物園花のかおりがじまんです

平良中一年・福原 吟子
美しく色づく緑どこまでも

平良中一年・福原 吟子
木の下で眠りたくなる緑の葉

平良中一年・福原 吟子
ここにしか見れない春もあるんだね

平良中一年・大城 叶子
枝だけのデイゴの下で陽を避ける

伊良部中一年・平良 夏希
風に乗りいざ旅立ちと巣立鳥

伊良部中一年・前泊 江美
春の野やほのぼの歩く並木道

伊良部中二年・国仲 捺都美
三月や思い出語る友の顔

伊良部中一年・奥原 悠人
うぐいすや別れの歌の卒業式

伊良部中一年・島尻 真妃
春風に乗って飛び立つ卒業生

伊良部中一年・島袋 大輔
春植えで顔がほころぶ父がいる

平良中二年・平良 涼
春の森生きる力を感じたよ

平良中二年・下地 麻依
あげは蝶風と共におにごっこ

平良中二年・下地 麻依
虫たちが春の日差しで目を覚ます

平良中二年・伊地 しおり
木漏れ日に誘われ昼寝木の下で

狩俣中二年・伊良部 愛梨
気が付けば日影を選び歩いてる

狩俣中二年・伊良部 愛梨
オオバギの葉っぱの屋根の木陰かな

平良中二年・伊地 志織
校庭の桜も祝う十五の春

平良中二年・長浜 笑美
春の夜歩いて迷った猫が鳴く

平良中二年・ハードマン七菜
たんぽぽが空に向かって背伸びする

平良中二年・饒平名 護
新しい風が吹き出す入学式

平良中二年・佐和田 真美
桜咲く巣立ちの時がやって来た

平良中二年・池村 優作
春の風桜の花をゆらしてる

平良中二年・上地 康太
タンポポのこどもがみんな飛んでいく

平良中二年・国仲 優希子
菜の花が風に吹かれて歌い出す

平良中二年・吉浜 千華
梅の花家族そろって記念写真

平良中二年・上原 規代
春風が私に夢をふきこんだ

平良中二年・砂川 紗貴子
三月は別れと出会いの来る季節

平良中二年・久貝 美夏
ふと気づく雲雀の声のコーラスだ

平良中二年・川根 みどり
春風がふわりと運ぶこの気持ち

翔南高二年・川満 真里奈
思い出も波に消えてく暑い夏

翔南高三年・宮国 宏信
春風や浜辺の砂の舞い上がり

翔南高三年・東風平 祝
冬の海たわむれ書きの白い浜

 山田 弘子(やまだ・ひろこ) 俳人。兵庫県出身。高浜虚子らに師事。ホトトギス同人、第二回日本伝統俳句協会賞。95年、俳句月刊誌「円虹」創刊・主宰。NHK教育テレビ「俳壇」の前選者。

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