子供俳句no.3/選・山田 弘子 2006/02/23掲載

 今回(一月末締め切り分)は小学生から高校生まで五百六句の応募がありました。前回より三十一句増えました。たくさんの応募ありがとうございました。その中から特選七句、入選六十四句を紹介します。選と講評は「円虹」主宰の山田弘子氏です。
次回の投句締め切りは三月末です)

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講評
 今年の冬は日本列島を寒波が襲いました。先生の住む神戸では今朝(二月十二日)も雪が降りました。暖かい宮古島でもこの冬は海の魚が凍死状態で浮いてきたというニュースが報じられましたね。こうした異常気象も地球の温暖化と関わりがあると聞きました。一人一人が地球を大切にしようという心を持たなくてはなりませんね。今回もたくさんの応募作品がありました。お正月の行事や遊びを詠んだもの、近づく卒業への別れや希望など、自分をとりまく生活や自然がしっかりと素直に詠まれていました。いよいよ春、すべての生命が息づく季節です。俳句は自然を詠む詩です。心の目を開いてしっかりと作品にしてみましょう。

<特 選>
平良第一小学校三年・伊良部 鳳大
どろんこのだいこんぬいてハイチーズ
なんときもちのいい俳句でしょう。はたけのだいこんを力いっぱいひっこぬいたとき、あやうくしりもちをつきそうになったにちがいありません。それをしっかりとふんばって、「ハイチーズ」とポーズをしてみせた鳳大くん。どろをきれいにあらいおとしただいこんは、まっ白にかがやいて、やさいのおおさまのかんろくです。

下地小学校三年・宮国 香鈴
足のうらあわせてにっこりこたつ中
 家族みんなでこたつをかこみ、だんらんのひと時でしょうか。それともきょうだいどうしでしょうか。何本もの足がこたつの中でもつれています。向こうがわの足のうらと自分の足のうらをたがいに合わせると、なんだかくすぐったくて、おもわずにっこり。こたつのなかでのちょっとしたことがこんなたのしい俳句になるのですね。すなおな心だからこんな句が生まれるのです。

城辺小学校五年・上間 星良
おおみそか今年の自分見直した
 一年も今日で終わりという大晦日は、みな今年一年をいろいろと振り返ります。楽しいこと、つらかったこと、がんばったこと、いろんな思い出がよみがえってきたことでしょう。星良くんはしっかりと自分のことを振り返り、意外にがんばったなあ…と思えたのですね。「けっこうがんばったよな」と自分を見直したのです。すばらしいなあ。

宮古工業高校二年・奥平 明日香
肩上がる寒さにみんな小走りで
 寒いとついきゅっと肩をすくめて歩いてしまいますが、寒い朝、通る人たちがみんな肩をあげて歩いているのを描写しました。こんなふうに見たままを素直に表現することは、作り事でない力のある一句になるものです。しかもちょこちょことみんな小走りで急いでいます。「寒さ」という語が厳しい季節を受け止めしっかりと写生しているのです。「写生」の大切さを教えてくれる一句です。 

上野中学校三年・宮国 真奈美
ありがとう素直にいえた卒業式
 中学生の年頃は、心とはうらはらに、なんとなく照れくさかったり素直に表現できなかったりして、周りへの言葉が足りないことが多いものです。どうしてもっと素直になれないのかしら、と自分を見つめるもうひとりの私。それが卒業式の日、「お父さん、お母さん本当にありがとうございました」「先生ありがとうございました」と驚くほど素直な自分を発見したのですね。

伊良部中学校一年・平良 夏希
キビ刈りや顔つき変わる祖父の顔
 宮古島の冬は甘蔗刈りの季節です。高々と伸びた甘蔗を一家総出で刈り倒す作業はなかなか重労働です。台風にも耐えて育った大切な甘蔗を刈って束ねて出荷するのですね。日ごろやさしくて穏やかなおじいちゃんですが、甘蔗の刈り取りにかかると、顔つきが変わってくるというのですね。こんな家族の表情を捉えて出来た一句に大変感心いたしました。

平良第一小学校六年・宮国 貴也
寒風に背中おされて走りぬく
 これは冬のマラソンでしょうか。ひゅうーひゅうーと吹く寒風の中をただゴールを目指して走る貴也くん。よけいなことは考えないで、ひたすら走ることだけに集中して。寒い風だけれど、背中から応援してくれているよう。「走りぬく」という下五によって、最後まで完走できた喜びと誇りがにじんでいます。力強さも表現できています。

ワンポイントアドバイス
 俳句はとてもみじかい詩です。いろいろなことをいっぱい言いいたくても、それはとても無理です。本当に言いたいことは何かをしっかり的をしぼることが大切です。あれもこれも言わない、これは俳句ではとても大切なこと。余分なことばはないか、相手にもっとよくつたわることばはないか、いろいろ工夫してみましょう。表現したいことがピタリと言えたときはとても気持ちがいいものですよ。できた俳句をねりなおすことを「すいこう」といいます。


<入 選>

城辺小一年・渡久山 颯太
あおぞらにちいさくうかぶぼくのたこ

南小学一年・たいら りょう
さむすぎるまどからみえたやせた月

平良第一小二年・かわみつ あみ
くやしいなまけてばかりのはごいただ

平良第一小二年・しもじ なな
ねんがじょうみんなのもとへたびだつよ

平良第一小二年・いそべ しほ
おおそうじみんなばたばたほこりとぶ

平良第一小二年・むらよし さやか
あきかぜがすこしつめたくなってきた

平良第一小二年・安田 まなみ
バレンタインわくわくするなあげるのが

平良第一小二年・たかえす のりゆき
秋風がとおりすぎたよいいかおり

平良第一小二年・たかえす のりゆき
だんちの木しゃくとり虫が大さわぎ

城辺小二年・長浜 ゆきの
さむい夜そらそらいっぱいに星ひかる

城辺小二年・しもじ さやか
はるかぜがおひるねをしているようだ

下地小三年・上地 航太
ふゆのうみさかながひえてながれつく

城辺小三年・砂川 かなえ
年がじょうもらってわたしてたのしいな

城辺小三年・高江洲 彩香
年がじょういとこにかいてだしました

城辺小三年・下地 遼太
おせちにはめでたいことがいっぱいだ

下地小三年・川満 磨里
背のびする北風の中きびのほが

下地小三年・川満 たくみ
きびたおし雨がふってもまだやるの

下地小三年・友利 倫子
冬の海きれいな色で流れてる

下地小三年・砂川 泰樹
ダンプカーきびをたくさんせおってく

下地小三年・友利 りゅうせい
ふでばこにえんぴつつめて三学き

下地小三年・砂川 大
せいとうきトラックきびをおとしてく

下地小三年・下地 幹成
きびたおしとげもささったいやになる

鏡原小二年・なかしま ゆうと
こままわし今日はぜったいまわせるぞ

鏡原小二年・本村 けい
ふくわらい目かくしはずしおおわらい

城辺小四年・上地 貴大
はつ日のではやくおきなきゃみれないよ

城辺小五年・仲里 葉奈
冬すぎて窓をあければ鳥がなく

城辺小五年・仲里 葉奈
門松がげんかんさきにおいてある

城辺小五年・砂川 綾伽
書初めは心しずかに集中だ

城辺小五年・垣花 理穂
美しい正月の海に乾杯だ

平良第一小六年・津波古 康介
思い出が頭をよぎる卒業式

平良第一小六年・下地 雅也
書初めで目標書いて新たまる

平良第一小六年・前泊 春花
春の風となりの町からやってくる

平良第一小六年・下地 勝貴
成人式スーツできどる兄の顔

平良第一小六年・友利 夏実
寒風に木々がふるえて立っている

伊良部中学一年・国仲 未来
雨上がり春めく空にきびの穂光る

伊良部中学一年・佐和田 広大
宮古島きび刈り励む親子連れ

伊良部中学一年・平良 美香
この島に響き渡るはキビ音色

伊良部中学一年・伊佐 真智子
きび倒し春をむかえる準備かな

平良中学一年・奥平 愛鈴
犬の毛がうらやましいな寒い冬

平良中学一年・屋嘉比 萌
冬の空いつもふきげんなおせない

平良中学一年・上地 佑弥
菜の花がゆれて仲間と踊ってる

平良中学一年・砂川 太亮
雪解けがねむる動物おこしてく

平良中学一年・福原 吟子
初空に真っすぐ決意きざみこむ

平良中学一年・宮川 ひかる
こままわし自慢をしてるお父さん

平良中学一年・伊志嶺 紗央理
つばめたち空のかなたへ飛び立つ日

平良中学一年・兼子 友希
こま回し少年になるお父さん

平良中学一年・平良 大夢
風光る自分のゆめはもう近い

平良中学二年・上原 規代
桜咲く旅立ちの日に涙ちる

平良中学二年・ 砂川 翔太
春の空聞こえてくるよ風の声

平良中学二年・下地 麻依
夢語る笑顔輝く成人の日

平良中学二年・濱川 勝利
つばめ見て夢で自分もとんでいた

平良中学二年・伊地 志織
キビ刈りが冬の終わりを伝えてる

上野中学三年・砂川 健太
卒業式広い世界へ扉開く

上野中学三年・川満 航
卒業は新たなたびへのスタートライン

上野中学三年・砂川 貴哉
想い出が涙に変わる卒業式

伊良部中学三年・砂川 恵美
あかぎれを見ては感じる母の愛

伊良部中学三年・津嘉山 翔
キビ刈りで父の背中に汗にじむ

宮古工業高三年・砂川 亮太
寒いけど君の笑顔が見たいから

宮古工業高三年・砂川 直毅
冬の街みんなの足がはやくなる

宮古工業高三年・砂川 直毅
このマフラーすてられない理由がある

宮古工業高三年・下地 大志
寒い夜鍋を囲んで家族の輪

翔南高校三年・宮國 康徳
春の海ふわり広がる青世界

翔南高校三年・仲間 美香
春光の珊瑚に集う魚達

翔南高校三年・宮國 泰葉
スズメダイ群れて大きい春の海

 山田 弘子(やまだ・ひろこ) 俳人。兵庫県出身。高浜虚子らに師事。ホトトギス同人、第二回日本伝統俳句協会賞。95年、俳句月刊誌「円虹」創刊・主宰。NHK教育テレビ「俳壇」の前選者。

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