子供俳句no.1/選・山田 弘子 2005/10/27掲載

  「宮古毎日子ども俳句」が本日よりスタートします。宮古毎日新聞社が宮古島ジュニア俳句育成会の協力を得て実現した紙面企画です。俳句づくりを通して、子供たちの交流が全国的に広がることや、宮古島が俳句の発信地となるよう期待を込めています。今回(九月末締め切り分)は、県外を含め合わせて四百四十句の応募がありました。その中から特選七句、入選六十六句を紹介します。選と講評は「円虹」主宰の山田弘子氏です。
 (次回の投句締め切りは十一月末です)

  ★〜★〜★〜★〜★〜★〜★〜★〜★〜★〜★〜★〜★〜★〜★〜★

講評
 新しく「子ども俳句」が始まりました。いったいどのくらい俳句が集まるかしら、とちょっと不安に思っていましたが、どさっと届いた皆さんの作品はいずれも力作ぞろい。一生懸命作っているそれぞれの顔が見えてまいりました。そんな中で選ぶのは大変な作業でした。どうしてもおとさなければならないからです。私は選をするときは作者はどんな顔をして作っているのだろうか、ということをとても大切にして選びます。ものまねではなく、自分の目をしっかりと生かしている句をとったつもりです。特選の句は勿論のこと、入選のどれもこれも大変レベルの高い作品をとてもうれしく思いました。どうかこれからも頑張って投句してください。(評・山田弘子)


<特 選>
城辺小2年・渡久山 颯太
 なつのうみくじらのしっぽでかかった
 まっさおな海にかこまれている宮古島です。海のいろだってやっぱりきせつによってちがっているにちがいありません。颯太くんはなつのこいいろをした海でくじらを見たんですね。スゴイ!。あたまもどうたいもきっとすごく大きかったにちがいありませんが、ばさっと海めんをたたくようにして泳ぐつよそうなしっぽにおどろいたのですね。そのいんしょうを力づよくはいくにしたところがすばらしい。

鏡原小1年・柏谷 ゆう太
クワガタのじまんのあごでむかいうて
 カブト虫やクワガタ虫の大好きなゆう太くん。きっとあさはやくおきて、じぶんでつかまえたのかな。二匹をたたかわせてかちまけをきそわせるのもたのしいにちがいありません。とくにクワガタのあごはくわの形をしていてごじまんなのです。「むかいうて」と、いっしょうけんめいせいえんをおくっているようすがよくわかります。力づよいすなおなさくひんになりました。

城辺小2年・荷川取 星弥
あきかぜといっしょに走り一とうしょう
 うんどうかいの俳句でしょうか。「ヨーイドン」というあいずで走りだした星弥くんはぐんぐんみんなをぬいて一とうしょうになったんだね。おめでとう!。秋風がきっとおうえんしてくれたにちがいありません。「あきかぜといっしょに」走ったとひょうげんし、とても気持ちのいい作品になりました。

平良中3年・大城 啓
台風の目に入ったか今日の母
 今年もつぎつぎと大型台風が宮古島に接近し、先生をはらはらさせました。この句は台風そのものを直接詠んでいるわけではありません。お母さんの様子に台風の目を重ねているのです。実は台風の目というのはとても静かなのです。さっきまで吹き荒れていた風がピタリとやみ、無風状態になります。啓君のお母さんはときどきは雷が落ちたりするかもね。ところが今日はとても静かで、なんだか変です。「台風の目に入ったようだな」と感じたところがすばらしい。ユーモラスでしかも台風の目という季題がとてもよく効いています。

平良中1年・真壁 宏丞
風さえも濃い影おとす夏の海
 この句は風を音として目でとらえたのです。真っ青な夏の海を渡る風を感じながら宏丞くんは海辺に立っています。ほんとうは風の色など目では見ることはできないかもしれないのですが、夏の深い藍色を渡る風がなんだか影を置いてすぎたように思えたのですね。その感覚がすばらしい。どんどん自分の言葉を発見して作品にしてください。

平良中1年・平良 優也
風ふけばきびも歌うよ風の歌
 これも風の句ですね。森山良子さんがうたう「ざわわざわわ」の唄を思い出しました。私もたびたび宮古島に行きますが、そのたびにさとうきび畑の風の音を聞くのを楽しみにしています。風が吹くといっせいにきびが風の歌を歌うというのです。これからも宮古島の景色や物音をしっかりと詠んでください。

伊良部中1年・平良 夏希
秋の夜風が奏でる島の唄
 中学生になるとさすがに詩情ゆたかな表現ができていて、すばらしい。夜風の音にじっと耳を澄ませていると、なんだか島唄に聞こえてきたんですね。これは夏希さんのこころが柔らかいからです。どこにでも俳句はころがっているものです。それをキャッチするこころが大切なんですね。
 

山田弘子のワンポイントアドバイス
 俳句は五・七・五というリズム、十七音の詩というのは、みんなよく知っていますね。そこへかならず一つの季節のことばを入れましょう。じぶんのまわりや道を歩くとき、気がついたことや見たことをメモするといいですね。ぜひ「俳句ノート」を作ってみてください。今日できた俳句はノートに書いておき、あくる日にもう一度見かえすと、ここはこうしたほうがいい、 と気づきます。

 
<入 選>
東幼稚園5歳・平良 樹
きけんだよトンボがとんでるたいふうだ

南小1年・たいら りょう
またきたぞしまにぶつかるたいふうだ

埼玉県越谷市 6さい・やすだ りょう
なつのひるとりをみてたらダイビング

平一小2年・しもじ なな
ながれぼしねがいをかなえてピッカピカ

平一小2年・大城 仁
読書の秋心の中がおどってる

平一小2年・ねま みき
秋風にふかれてきもちおちつくよ

平一小2年・玉川 裕也
十五夜のかがやく月がわらってる

平一小2年・照屋 瞭
ふかぎ食べしあわせきたよ十五夜だ

平一小2年・砂川 佳樹
あきかぜだ木のはさらさらきこえるよ

平一小2年・たかえす あいか
ながれぼしみんなのねがいかなえるよ

平一小2年・ねま みき
あきかぜはみんなのこころなごませる

城辺小2年・長浜 ゆきの
秋風にかこまれながら運動会

西城小2年・しもじ みゆき
きゅうしょくでとうもろこしがあまかった

西城小2年・しもじ みゆき
ゆっくりとはっぱがおちるあきのそら

鏡原小2年・うちま このみ
たいせつなあさがおたべたかたつむり

鏡原小2年・もとむら けい
春のあさたんぽぽにっこりでてきたよ

鏡原2年・川上 優輝
ハムスターえさをたべたらさむそうだ

下地小2年・来間 比呂乃
じてんしゃではしっていったらすずしいな

狩俣小2年・なかま はやき
かぶとむしはねをひろげてどこへゆく
 
東幼稚園5歳・かしわやゆう太
春風におされてかようしんがっき

下地小3年・渡真利 香菜美
秋風といっしょに食べたおべんとう

下地小3年・友利 倫子
台風でせんたくものがさかあがり

下地小3年・東風平 億
かわむけた日やけしすぎて三回目

久松小3年・砂川 真凛愛
グッピーとプールでおよぐ子どもたち

城辺小4年・荷川取 弥早
夕方にトンボのむれがとんでくる

城辺小4年・上地 貴大
とんぼがねかぜをつかってとんでるよ

城辺小4年・下地 まどか
もみじのはいろんないろがまざってる

下地小4年・洲鎌 奈留美
秋の虫朝までずっとがっしょうだ

下地小4年・川満 夏希
夏の海魚といっしょにおよぎたい

下地小4年・川満 希望
ひまわりはたいようあびてそだってる

下地小4年・根間 大輔
はらへった秋はやっぱり食よくだ

城辺小5年・仲里 葉奈
赤とんぼ広大な空かけめぐる

城辺小5年・狩俣 あかね
運動会みんながおうえんしているよ

城辺小5年・国吉 千佳
運動会でうまくおどれたエイサーだ

城辺小5年・狩俣 美沙樹
太陽がおうえんしている運動会

下地小5年・友利 風胡
夏の空きれいな雲が広がるよ

福嶺小5年・佐次田 萌恵
けいろう会みんなのおどりよろこんだ

東京都墨田区立中和小5年・手塚 雄一郎
夜の菊光のように咲いている

伊良部中1年・古波蔵 倫
雨上がり大空高く舞うサシバ

伊良部中1年・津嘉山 絵梨奈
風鈴の音聞きながら終わる夏

伊良部中1年・佐和田 広大
秋風に見た事もない祖父の顔

平良中1年・田仲 翔子
おばあちゃん暑さに負けず畑仕事

平良中1年・福原 康平
夏夜空輝いている星座たち

平良中1年・砂川 拓海
声がわりせみの声よりずぶといな

平良中1年・大城 叶子
のらねこが夜ふけのへいで月見する

伊良部中2年・元長 貢紀
秋が来て伊良部町章幕閉じる

伊良部中2年・荷川取 史也
秋空や心つなぐ組体操

伊良部中2年・佐和田 尚也
島人が歓声上げるサシバ群

平良中2年・島尻 なつみ
台風が島の景色を変えていく

平良中2年・砂川 紗貴子
梅雨あけて音量ぜんかい蝉の声

平良中2年・饒平名 護
台風の後に待っている始業式

平良中2年・伊地 志織
通り雨かくれる虹を誘いだす

伊良部中3年・砂川 恵美
ただいまとサシバの渡り里帰り

平良中3年・屋嘉比 彩円
やわらかく風が包むよススキのほ

平良中3年・根間 彩加
日焼けして海のにおいをまだのこす

宮古農林高1年・川満 友也
こたつの中心安らぐ僕の基地

宮古農林高2年・砂川 綾子
とんぼがね空に恋したまっかっか

宮古農林高2年・佐久川 ちなつ
十五夜に隣で三味線うたってる

宮古農林高2年・砂川 友則
大そうじ枯れ葉集めて焼き芋だ

宮古農林高2年・渡真利 沙希
青い空みんなが輝く運動会

宮古農林高2年・鹿川 舞
気づいたら過ぎ去っている島の秋

翔南高3年・平良 梢
カサカサと走る足音ゴキブリだ

伊良部中2年・久貝 莉穂
風に乗り去りゆくサシバ何処へゆく

翔南高3年・西平 一樹
晴天やトンボめがけてまっしぐら

伊良部中2年・亀川 純希
流れゆく雲にまじってタカの群れ

伊良部中2年・佐和田 敦子
秋の空背中を押され一等賞
 

 山田 弘子(やまだ・ひろこ) 俳人。兵庫県出身。高浜虚子らに師事。ホトトギス同人、第二回日本伝統俳句協会賞。95年、俳句月刊誌「円虹」創刊・主宰。NHK教育テレビ「俳壇」の前選者。


 

<<<俳句ページにもどる