宮古上布にかかわって七十七年。初めて上布を織った十六歳の時から、仕事の丁寧さには定評があった。
今も毎日、自宅の横にある小屋でブーを績む。「体が覚えているからね」と話に夢中になっても熟練された指先は止まらない。
太陽の光に透かすと見えなくなるほど、細く均一に整ったブーを一本一本絡まないように巻いていく。
集中したら周りが見えなくなるシゲさん。「戦争中、上布を織っていたら、家のすぐ隣が機銃掃射を受けてびっくりしたよ」と空襲に気付かずに、危うく命を落としかけたこともあったとか。
沖縄本島で看護師をしていたひ孫が、一日付で宮古病院の配属になった。
健康で病気知らずのシゲさんだが「ひ孫の頑張っている姿を見て、元気をもらって来るさ」と病院に行く楽しみも増えた。
子ども三人、孫八人、ひ孫十六人。
(坂本慧) |