ブーを績み続けて八十年余り。細く均一に整った糸は皆から評判が良く「九十歳を過ぎた人が績んでいるとは思えない」と言われるほどだ。
「水くみのバケツや穀物類など、重たい物を頭に乗せて歩いていたから、頭に疲れが出て耳が遠くなっているみたい」と話すメガさん。
現在は体と相談しながら、趣味として自分のペースでブーを績む。
五年前には孫に会うため、アメリカで暮らす娘の元へ遊びに行った。「飛行機に乗っていたらあっという間に着いたから、きつくも何ともなかったよ」と余裕の表情。
メガさんは近年まで、身内や隣近所の子どもたちの健やかな成長を願い、各家々でニガイを行っていた。「人の健康を願っていたから、自分もそれにあやかったみたいだね」。
話を交わしながらも熟練した指先は、止まることなくブーを績み続けた。
子ども五人、孫十三人、ひ孫三人。
(坂本慧) |