「健康なミシンは柔らかい音をしている。音を聞くだけで具合が分かるものだよ」と話す上地さん。60歳から70代半ばまで、ミシンの修理を専門に宮古中を飛び回った。
当時はどこの家でも古い衣類を繕って大切に使った時代。主婦にとって、一家に1台の足踏みミシンは貴重な機械だ。上地さんが依頼先に駆け付けると、近所の主婦たちが「うちも、うちも」と集まったという。
名刺には「朝9時まで、午後は6時から10時まで」と電話予約の時間が刷られている。日中は修理に出回るためだ。電話1本で学校の家庭科室や離島にも足を運んだ。「(朝の)6時半にはもう電話が鳴っていたよ」と、多忙な生活を思い出す。
「喜ばれているかどうか感じる暇もなかった」。淡々と振り返るが、多くの母たちが縫った衣類の陰に、上地さんの技術が生きていることは確かだ。
子供4人、孫7人、ひ孫2人。
(文・写真 砂川智江)
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