玄関をくぐると、奥平さん手作りの紙製の鶴たちが迎えてくれる。中でも、孫が提供してくれるというタバコ箱の内包紙を何枚も使った銀色の鶴は、気品と愛嬌あふれる自信作。弟の八郎さんに作り方を習って以来、工夫を重ねて楽しく続け、友人や親類にプレゼント。喜ぶ顔に制作意欲は高まるばかりだ。「手を動かす趣味は健康にもいいってよ」と、弾む声にも活力がみなぎる。
　働き盛りの頃は「焚き木を集めたり井戸から水をくんだり、生活のために力仕事も当たり前だった」。農繁期はもちろん家族総出で精を出す。「夏のキビ植えには、井戸から家族の飲み水を運んで来るのが子供たちの大仕事。皆が大変だった分、家族の絆も強かった」と振り返る。
　「90代は、孫やひ孫たちと歌ったり踊ったりして、もっともっと楽しみたい」と笑った。
　子供7人、孫10人、ひ孫20人。
（文・写真　砂川智江）