衝撃から1年 (下)

 災害に強い街づくりを求められる電線地中化の拡大

電柱倒壊800本、停電2万1400世帯 】

 数10年ぶりに大きな台風を経験した宮古島地方は「災害に強い街づくり」が今後の都市計画の中での大きなテーマとなった。停電は最大で延べ2万1400戸、完全復旧には約 2週間を要した。倒壊した約800本の電柱は道路をふさぎ、交通の支障に。緊急出動を求められた消防や警察機関も思うように身動きが取れなかったという。「台風銀座」といわれる宮古島では今後、サラ、コラ、デラ、台風 14号以上の勢力を持った台風が襲来する可能性は高い。

 内閣府沖縄担当部局の2005年度予算の概算要求に県道78号(平良城辺線)の宮古病院付近から宮古空港入口まで2・75キロ(両側で5・5キロ)での電線地中化事業が盛り込まれた。各市町村長、議会議員の行ってきた積極的な要請活動が実った。

 奥平一夫、砂川佳一両県議ともに「大きな第一歩」と喜び、「宮古は台風常襲地である。一部の幹線道路だけでなく隅々までこの事業が拡大されるよう今後も積極的に取り組んでいきたい」と強調した。

 台風14号の際、電気復旧まで約10日ほどかかったという城辺町福里に住む女性は「電気は生活の基本。市内だけでなく郡部も電線地中化を進めてほしい」と求める。

 宮古地区の設計士有志で構成する宮古総合企画設計協同組合(国仲英輝理事長)の会員、伊志嶺敏子さんは「官民一体となった防災に強い街づくり」を提唱している。
 伊志嶺さんは台風14号で、平良市久松地区の被害が少なかったことに着目。「曲がりくねった道路が風を分散させ、被害を少なくしたのでは」と分析する。
 そのことから、行政に対し「被害の大きかった集落とそうでなかった集落を検証し、今後の都市計画で反映すべきだ」と説く。

 また、住民には「住宅の日常のメンテナンスが非常に重要となる」と指摘。台風14号の際、アルミ製の雨戸で対策しているのにもかかわらず、窓ガラスが割れたケースがあることを紹介し、「塩害によりアルミが腐食していたと考えられる。台風の時だけ対策すればいいわけではない。宮古は塩害の強い地域なので、台風後は家一軒を丸ごと洗うつもりで隅々まで真水で洗い流してほしい」と助言する。

 災害時の医療体制を万全にしようと県立宮古病院(恩河尚清院長)と宮古地区医師会(中村貢会長)、宮古福祉保健所(高江洲均所長)も連携を強化して取り組んでいる。
 台風14号の際、インターネット上で宮古地区の医療関係機関のみが閲覧できるサイトで患者の受け入れ可能な病院を判別。また、外来患者の傷病の緊急度や程度に応じ、「トリアージタグ」と呼ばれる識別票を患者の手首に巻き、外来患者と入院患者を混同することなく対応した。
 恩河院長は「防災マニュアルは常に見直さなければならないもの」とし、経験を踏まえ今後も関係機関との連携を密に取り組んでいきたい考えだ。

 各地で救急救命士講座を開き、応急処置の重要性を訴える宮古広域消防組合(渡真利定一消防長)。台風14号下の出動要請はほとんどが割れた窓ガラスでの負傷だったという状況を踏まえ、現在、町村部や離島など同様の災害時、出動が困難と予想される地域などで講座を開いている。対象は子供会、学校、婦人会などと幅広い。

 講座では負傷部位別の止血法や人口呼吸法を分かりやすく、実技を通して行う。多くの人に学んでもらうことで、緊急時に近くにいる人が手当てを施し、けがを最小限に抑えようという考えだ。
 渡真利消防長は「学校や団体など要望があれば場所を問わず出向き、積極的に開講していきたい」と意欲を示す。

 災害は忘れたころにやってくる。真に「防災に強い街づくり」を進めるのであれば、将来に向けて今、何ができるかを1人ひとりが日々、真剣に考えなければならない。(おわり)
(福里賢矢記者)

 写真説明
・昨年の台風14号では電柱が倒壊し、交通に支障をきたした

■メモ 台風14号被害状況(県宮古支庁まとめ)によると、農産は29億461万9000円、林産8億5540万6000円、畜産2億4841万3000円、水産6866万円、商工8億908万9000円、その他(レジャー施設、個人住宅、宿泊施設など)29億7979万5000円となっている。

 

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