衝撃から1年 (中)

 避難所の機能果たせたか求められる施設の強化と周知

公共・学校施設も被害甚大 】

 台風14号は緊急時、住民の避難所となる公共施設も破壊した。城辺町立城辺中学校体育館、下地町農村環境改善センター、上野村営体育館など、これまで地域の避難場所に指定されていた場所での被害が相次いだため、避難場所の見直しが求められた。それから 1年。各施設は復旧され、原形を取り戻したが、同様の台風の際、避難場所としての機能を果たせるのか。

 災害で破壊された建物の復旧には国と県が8−9割を負担する「災害復旧費」が充てられるケースが多い。城辺中学校体育館と上野村営体育館も台風後、国の査定官が視察し、災害復旧費の適用が認定された。災害復旧費は高額補助だが、建造物に適用される場合は「原状回復」が前提。新たに手を加えた分、災害に対しての強度は増すが、予算の都合で 2カ所とも大幅な「強化」までは至っていないのが現状だ。加えて、雨戸が設置されていない公共施設も多く存在するため、避難場所として適しているかは疑問が残る。

 下地町農村環境改善センターは災害復旧費を充てず、町の事業として改修。従来より多少の強化は施したというが予算の関係上、ほぼ原状回復となったという。担当者は「台風の時だけでなく、改善センターは津波の際にも避難場所として機能を果たすかは疑問が残る。住民には臨機応変に避難してもらいたい」と呼び掛け、「ただ、このままではいけない。今後何らかの強化策を講じていきたい」と話した。

 上野村では台風14号後、新しい避難場所として同村役場を追加したが、その他の自治体では大きな変更はなく、公民館や学校など従来のままとなっている。

 ある自治体の防災担当者は「大幅な見直しが必要なのは分かる。復旧しても元に戻っただけなので、大きな災害がくると14号の二の舞いになる可能性もある」と強化の必要性を感じながらも、「施設が余っているわけではなく、ある施設をフル活用しているのが現状。予算の問題もあるため簡単には強化もできない」と苦しい台所事情を説明する。

 今年5月に平良市に転居してきた女性(24)は台風14号を体験していないが、当時の新聞報道などで被害の大きさを知ったという。「引っ越してきてから何回か台風を経験したが、報道写真を思い出して、怖くなってしまう。もしも、家が壊れたらどこに避難すればいいのか分からない」と避難施設の周知が必要だと話す。また、「それでも、怖くて台風で壊れた施設に避難はできない。住民のことを考えて、もっとしっかりとした施設を造ってほしい」と訴えた

 城辺町に住む男性(32)は「台風14号の時、城辺線は電柱が倒壊して車も人も通行できる状況じゃなかった。避難場所までどうやって行けばいいのか分からない」と言う。若い人でもこれだけの不安を感じているなら、お年寄りならなおさらだろう。

 台風14号から1年が経過したが、各自治体とも予算の問題など思うように防災への強化が進んでいないのが現状のようだ。
 住民の安全を守るという観点から見ると避難場所の整備はいまだ完全とは言い切れない。
(福里賢矢記者)
 
 写真説明・昨年の台風14号の強風で壊滅的状態となった城辺中学校体育館

■メモ 県宮古支庁のまとめた被害状況確定値によると、公共文教施設(学校など)の被害は5億4418万6000円、公共土木施設(平良港、道路案内標識など)被害11億4812万8000円、その他公共施設(宮古空港、上野村営体育館など)被害は21億6042万6000円となっている。

 

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