ぺん遊ぺん楽


明治生まれのおばぁと
     平成生まれの汰
(たい)ちゃん

松谷 初美
(まつたに はつみ)
 


<2007年03/02掲載>

 ばんたが(うちの)みきちゃん(兄嫁)は、昨年8月に無事次男「汰ちゃん」を出産した。もうすぐ七カ月になる。大きく生まれて今でもぐんぐん成長中だ。
 汰ちゃんは、お母さんに連れられて、実家にやってくる。人見知りをして、おばぁにもなかなか馴れなかったそうだが、五カ月あたりからおばぁに抱っこされても泣かなくなった。
 明治43年生まれ(本当は明治41年生まれらしい)のおばぁは、汰ちゃんがやってくるのをとても楽しみにしている。立って抱っこすることができないおばぁは座って、抱っこする。
 汰ちゃんのお気にいりは、脇を持ってもらって立ち、足を使い、ドンドンと飛び跳ねることである。まぁ、どこにそんな力があるんだと思うくらい跳ねる。体重も8キロを超えているので、支えるのは大変だと思うが、おばぁは、汰ちゃんの体を支えながら「ヒヤ、ヒヤ、ハイハイ」と掛け声をかける。
 汰ちゃんが、飽きてきて「ギャー」と大声を出すとおばぁもその声を にゃーびしー(真似て)「ギャー」と言う。まるで掛け合い漫才のようだ。おばぁは、なかなかのお茶目でもある。
 そして、おばぁは、「汰ちゃんは、おりこーがまゆー」と頭をなで、頬をなでる。おばぁは、汰ちゃんのお兄ちゃんが生まれたときも、そうやって子守をしてきた。おばぁの声と手は、愛と慈しみに溢れている。
 おばぁは、この4年くらいの間に、立て続けに娘、息子を亡くし悲しみにくれる日々が続いていた。そして、時々「この年になるまで生きて ぱずかすむぬゆ(恥ずかしいものだ)」と口にする。
 人は、どんな悲しみ、不幸があろうと、それでも、生きていかなければならない。まして、自分の子どもが先にとなると、どんなにつらいことだろう。でも、生きている人は、幸せにならなければいけないと思う。
 おばぁは、汰ちゃんが生まれたことによってどんなに心の慰めとなったことだろう。平成18年生まれの汰ちゃんとおばぁの年齢差は、約100歳。まーんてぃ うかーすむぬ(すごいことだ)! おばぁと汰ちゃんのツーショットは、繋がることの素晴らしさを教えてくれる。
 みきちゃんは、そんな二人にカメラを向け、パシャパシャと写真を撮る。私も先日帰省した折、携帯カメラで撮り、待ちうけ画面は、おばぁと汰ちゃんの写真だ。
 時代は変わり、人々の生活も変わっていく。でも変わらない人の想いというもの。大事にすること、大事にされること。おばぁと汰ちゃんの姿を見ながら、私はしあわせいっぱいの気持ちで東京に戻った。

(宮古ペンクラブ会員・みゃーくふつメールマガジン主宰)


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